過去に例があれば今もやってよい というのは先人の営み積み重ねを蔑ろにする伝統破壊

過去に例があるから今もやってよいというのは伝統を尊重する在り様ではありません。
伝統自体変遷してきているものですし、中長期で時代状況・社会状況も変わってきています。
皇位皇統に関しては、天皇親政・同族婚(政治と直接的に関わる意味で権力闘争の面もあり)の時代から理念文化的象徴的存在へと位置付け役割も変わっています。
憲法に規定され国家・法制の枠組みで守られるようにもなっています。

歴史、文化、伝統というものは、人びとの営み、その積み重ねによって形づくられるものですから、迷いや間違い、失敗などもあっての蓄積、経緯となります。
最初から完成形があってそれがずっと守られて来ているという具合に無謬論で考える必要はありません。実際そうしたものではありません。
過去に過ちや失敗があってもがっかりすることもなければ、それで価値を否定する必要もありません。
過去を教訓としつついかに高めて来たかこそが重要であり、価値、誇りとなるのです。

こうしたことは、本来は伝統、文化を捉える上、論ずる上では初歩的な視座になるのですが、現在は伝統教育、文化教育が各家庭の衣食住のレベルから崩れ、公教育においても不十分で、習得・伝承が機能不全になってきている状況となります。
いわゆる和の芸・道の分野でさえ、衣食住の基礎根本の踏まえのない中で進められている現状もあります。
(高段位者、師範、範士等でも着装論として破綻なく袴を着けられない、帯の結び方も理解不十分など。
http://kyudo.kimono.gr.jp/home/wasouishiki/kyudowasou.pdf )

衣食住・行事風習の実生活に根差した学びがあれば、日々のあれこれや季節に応じた工夫、アレンジ等を身近に体験・実践する中で、歴史の変遷・技術史の発展等により意味合い・位置付け・様式が変わりつつ昇華されてきている“伝統・文化の段階論”をリアルに感ずることが出来ます。
当初段階から確立された型があってそれが代々、何百年と続いてきたというものではないと分かります。
伝統文化の変遷、時代風潮などの中で波があるもので、必ずしも全肯定出来るようなものではないこと。反省例や教訓例として捉えるべきもの、現在において先例として捉え踏襲するのは相応しくない(悪例、反省例として捉えるべき)ものがあるということ。こうしたことが分かります。

皇統、皇位継承においては、先人の積み重ねにより仁、和、君民共治のレベルを高めて来た尊い伝統の昇華があります。
何を変え、何を変えないか、受け継ぐべき・受け継いできた芯はなにか。
こうした本質捉えこそが重要であり、伝統議論、文化論の要諦となります。

万世一系であり万世男系ではない。
皇位継承においては、男系継承はいわば必要条件です。
男系で繋がればよい、女系にならなければよい、王朝交代が起こらなければよい。といった継承方法、伝統の積み重ねではありません。
重要なのは、和、民のかまど、君民共治といった理念、価値観です。
男系という必要条件を踏まえつつ、いかに和の質、仁=究極の無私、君民共治のレベルを高めるかということで十分条件を高めて来たのが歴史となります。
この点の汲み取り、見抜きが出来るか否かこそが重要となります。

同族婚でない今。
天皇親政でなくなった今。
憲法、法制において幼少継承者の地位が国家的法治により守られる状況(0歳即位保障)となった今。
一系継承(日本の皇位の場合は男系一系)の基本に則り、女性天皇の即位は無用、かえって皇位の私物化になるというのが皇室典範=現行法制の意味合いとなります。
先人の積み重ね、歴史の段階上昇により、ようやく「純粋一系継承」がきれいな形で運用出来るようになったのが現在となります。

こうした歴史、伝統の昇華を踏まえることなく、解することなく、過去に女性天皇の例があるからそれ(男系女子の即位)はあってもよいなどというのは、野蛮な伝統破壊、非知性の浅薄となります。
養子についても同様です。

皇位は預かりもの、皇位の私物化こそが最大の戒めであり、現在においてはわが身かわいさ、わが子かわいさ、ご一家利権主義の娘継承、養子による直系の系図伸ばし、利権延長・囲い込みこそが戒めの皇位の私物化、卑しい継承目論見となります。
和崩し、君民共治の損ねとなります。
宮家においても同様です。宮家の私物化、宮家の利権化は許されません。
絶対にあってはならない、過去:先祖、未来:子孫から預かっているものを現世:我われで潰してはならない。そういうものです。

究極的には、衣食住を通じた和の取り戻し、温故知新により現代に和の再興をなしていくことが重要となります。
和の踏まえ、捉えと皇統理解、伝統・文化の理解は繋がるものであり。
現在の状況においては、和理解、皇統・一系継承理解の双方を広め、深めていく中で、相互相乗、善循環の流れを作っていく形が重要と考えます。

王位皇位の世襲方法分類、伝統を踏まえた皇室典範の意味・高度さに関しては、図表も含めたスライド動画説明を Youtube に登録しました。
ぜひご覧いただきたく。

小中学生のための天皇・皇位継承論  1 前半
・小中学生への期待 裸の王様を言うのは子供
・基本と応用、基本が大切
・基本1 王位・皇位の世襲方法分類 直系継承/一系継承
・基本2 王皇制の危険性・リスク 王統断絶・国王処刑・恐怖政治
・基本を踏まえての日本の皇位継承
・皇位は預かりもの 皇位の私物化は許されない 君民共治 シラス

小中学生のための天皇・皇位継承論 1 後半
・継体天皇 手白香皇女
・推古天皇 蘇我馬子
・光格天皇 後桜町天皇
・明治の皇室典範 高度な昇華
・憲法1条 象徴 国民の総意に基く
・憲法2条 世襲 皇室典範
・旧宮家子孫から皇籍に組み入れ・宮家設立

 

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