皇統・皇位継承議論の土台を高める意味での政府の役割

◆男女差別以上の根本的な天皇・皇族における差別問題は身分・門地差別(全国民が差別対象)であり、これと根本的に矛盾しないのが利権世襲・独占世襲ではなく預かり世襲・非独占世襲(皇位を私物化・一家利権化せず傍系他家へ渡す)である一系継承
◆憲法2条における「世襲」は旧宮家皇族による即位=五世孫以遠で時の天皇の系統から600年以上離れ天皇の近親皇族を臣籍に降下させつつも血筋順を飛ばして宮家・皇族として位置付けられてきた世襲親王家の流れをくむ皇族による継承も含まれた概念
◆男系継承が古来例外なく維持されてきただけではなく、更に高められてきているもので男系で繋がれば良いという継承方法ではない
など

皇統・皇位継承議論は2004年小泉有識者会議の頃から国民的な関心が高まり今日まで続いてきていますが、今あらためて議論の土台を高める意味で適切な形で政府見解を取りまとめて論点の整理を行うことが必要と考えます。

現行の憲法・法制の意味合い、正統性・正当性・妥当さを総合的・体系的に捉えて説明することは政府の大きな責任であり、官僚の役割認識・使命の自覚・高度な矜持に基づいて令和における再整理・統合的な説明がなされることを期待するところです。

政府は春の立皇嗣の礼以降に有識者会議等の設置も含めて皇統・皇位継承議論を本格化させる方針とのことですが、その人選・議論の前提としてもこうした現行法への総合的・体系的な理解が必須となると考えます。
有識者候補への事前のテスト、アンケート等の項目と位置付け人選の質を高めてもらいたいもので。
現代日本における「知」を象徴する会議として、国民議論をリードしてもらいたく。

1 政府見解の不十分さに関して

男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重み
などを踏まえながら慎重かつ丁寧に検討を行う必要がある

現在の皇位継承議論においては上記の政府見解が示されているところですが、間違いではないものの不十分であり誤解を招きミスリードとなり得る表現、見解であると捉えます。

・単に男系で繋がれば良い
との誤解を招きかねず皇統・皇位継承の捉えの水準を著しく低めることに繋がりかねません。

現行の法制:皇室典範においては、(女系天皇以前に)男系女子の女性天皇は排除され、男系皇族の養子も禁止されています。
そもそも皇統・皇位継承、一系継承は男系で繋がれば良いという継承方法ではありません。

王位皇位の世襲方法分類 直系か一系か

男系で繋がっても許されない継承とは何か

上記の政府見解ではこうした点が盛り込まれておらず、実際に現行法制:伝統の昇華を蔑ろにし後退させる論が広がっている面があります。
・女性と女系の違いが重要
・女系天皇はダメだが女性天皇は認めるべき
・旧宮家の子孫を養子として皇籍に入れたらよい
など。

あらためて言葉を補いより正確に表現し、以下の形などで政府見解をまとめることが重要と考えます。

男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重み
そして過去の教訓も踏まえつつ皇位を預かりものと捉える形で継承の質を高めてきた歴史の重み
などを踏まえながら慎重かつ丁寧に検討を行う必要がある

国民議論をミスリードすることなく、現行法制の意義も伝えつつ議論の流れを作っていくことが重要であり、政府の責任と考えます。

2 憲法2条における「世襲」規定に関して

・昭和22年に皇籍離脱した際の11の旧宮家における皇位継承者の継承順をあらためて明示すべき
(7位から32位まで26名の皇位継承者となっているはず)

・憲法2条における「世襲」の規定は、旧宮家の男性皇族:皇位継承者の即位が含まれる概念であるとの政府見解をあらためて明示すべき

日本国憲法は旧宮家の男子が皇位継承者として継承順を有する状態で公布・施行されていて、皇籍離脱はその後という時系列となっています。
1946年(昭和21年)11月3日、日本国憲法公布
1947年(昭和22年)5月3日、日本国憲法施行
1947年(昭和22年)10月14日、いわゆる旧宮家(11宮家51名)が皇籍離脱

すなわち憲法2条における「世襲」は、世襲親王家由来の旧宮家の皇族の即位可能性がある中での運用であり、その即位も含めて世襲であると規定されているものと解されます。
ここで言う世襲親王家由来による継承・即位とは、
・いわゆる「五世孫」よりも離れた繋がりで
・時の天皇家系からは600年以上も離れた関係で
・時の天皇家系の血筋の近い者を臣籍に降下させつつ
・より遠い者を皇族として残してきた宮家による
・血筋の順番を超えてより遠い血筋の継承者が即位すること
を言うものとします。

すなわち、五世孫以遠で、現在の皇統・天皇の血筋とは600年以上も離れている血筋である旧宮家の皇位継承者が皇位を継承することを是としている概念が憲法2条における「世襲」の規定となります。
これは、血筋順を超えても男系女子ではなく男系男子による継承が世襲として位置付けられているという「優先感覚」が組み込まれている規定と解されるところであり、この面の政府見解をあらためて明示すべきと考えます。

憲法2条 「世襲」の意味

3 天皇・皇族における差別問題 憲法14条との整合性

天皇・皇室における差別を考えるならば、
・男女差別:皇室内での限定された差別
(差別対象は皇族として生まれた女性で現状では内親王・女王の6名)
よりも、
・天皇・皇族と一般国民における身分・門地差別
(差別対象は生まれたばかりの赤ちゃんも含めて1億人以上の全国民)
こそが本質的な差別問題であり、この面で差別とならないように高められてきたのが一系継承=利権世襲:独占世襲ではない預かりものとしての世襲:制限を受けつつの世襲(天皇が自由にわが子に継承させられない)となります。
あらためてこの面の政府見解を明示すべきと考えます。

そもそも日本の皇位・天皇の位置付けは西欧の王位皇位・王皇・貴族階級もあり等とは異なり、特権存在・利権存在、分捕りものの地位ではありません。
(イギリス清教徒革命においては、革命で当時の国王を処刑したリーダー:クロムウェルがイギリス議会から国王に就任するように要請された経緯
そうした王位、文化的な相違となります)
この点は、あらためて西欧王室における王統断絶・国王処刑・恐怖政治の歴史との対比で説明・公論の喚起が必要な点と考えます。

「民の奔流」の恐ろしさ 王統断絶・国王処刑の西欧歴史

そもそも国民との間で根本的な差別のない、特権存在とは異なる天皇の存在・位置付けは、「民のかまど」という形で憲法25条とも繋がっているところとなります。

日本国憲法 第二十五条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

天皇が特権階級・利権存在とならずに、国民から収奪しない「君民共治」「シラス」の国の在り様・国民との関係性だからこそ「民のかまど」が成り立つのであり、その根幹は皇位を預かりものとして一家で私物化しない=利権世襲・直系継承(娘継承)をしない一系継承となります。

そうした天皇の存在、位置付けだからこそ、憲法1条において「象徴」「国民の総意に基く」と規定されている形になります。
これらは全て一系継承:預かり世襲という形で繋がっているものとなります。

憲法1条の意味、重み

シラスと皇位継承 シラスが成り立つのは無私抑制の一系継承:傍系移行=天皇の国譲りによってこそ

また、日本の皇位継承の特徴、利権世襲ではない点を分かりやすく伝える意味では、天皇の娘だけでなく、天皇の長男・一人息子でも一生皇位を継げないことがある、という事例・シミュレートの紹介が有効になると考えます。

天皇の長男でも天皇になれない妊娠時崩御 家督・相続物でない証左

1、2、3の点を政府の立場で明らかにするならば、皇位継承に関する国民議論の土台は大きく高められ、議論は前進し高度化されより本質的・建設的な形で展開されるものと考えられます。

憲法2条の「世襲」の規定も含め、女性宮家・女性女系天皇=直系継承への転換ではなく、旧宮家の子孫からの選択的な皇籍への組み入れ・宮家設立(養子無用、婚姻無用、組み入れ当人に継承順を付与)が正統な、憲法尊重擁護義務に沿った進め方となります

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参考動画 Youtube

1/5 小中学生天皇・皇位継承論 基本1 世襲方法分類が重要
直系継承と一系継承の文化的な相違  28分程

・小中学生への期待 裸の王様を言うのは子供
・基本と応用、基本が大切
・基本1 王位・皇位の世襲方法分類 直系継承/一系継承

2/5 小中学生天皇・皇位継承論 基本2 王統断絶・処刑・恐怖政治
王皇制のリスク認識・皇統断絶の危機意識低い 20分程

・基本2 王皇制の危険性・リスク 王統断絶・国王処刑・恐怖政治

3/5 小中学生天皇・皇位継承論 傍系移行:原点回帰が天皇の存在意義=和の維持装置
君民共治 シラス 23分程

・基本を踏まえての日本の皇位継承
・皇位は預かりもの 皇位の私物化は許されない 君民共治 シラス

4/5 小中学生天皇・皇位継承論 検証比較される和崩しの継承
歴代継承例と皇室典範による高度化  33分程

・継体天皇 手白香皇女
・推古天皇 蘇我馬子
・光格天皇 後桜町天皇
・明治の皇室典範 高度な昇華

5/5 小中学生天皇・皇位継承論 憲法論:象徴・国民総意・世襲
歴史を踏まえた文化的普遍的な共通認識に基く  30分程

・憲法1条 象徴 国民の総意に基く
・憲法2条 世襲 皇室典範
・旧宮家子孫から皇籍に組み入れ・宮家設立

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