憲法2条 「世襲」の意味

憲法2条における「世襲」を捉える上で重要なのは、世襲親王家(旧宮家の皇族)の即位を前提(有り得る)として規定されているという点です。
日本国憲法の公布は1946年(昭和21年)で、旧宮家の皇籍離脱は1947年(昭和22年)という時系列です。
日本国憲法も皇室典範も旧宮家皇族が殿下として皇室に存在する形において運用されているもので、時の天皇から数百年離れた皇族が存在してもなんら支障がない規定となっています。

日本国憲法 第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

昨今、憲法2条の「世襲」という規定、文言を自己都合で解釈して継承ルールを変えようという論が出ています。
・旧宮家子孫が皇室に入ること、そしていずれかの際に即位することは「世襲」に反するから認められない
・養子は「世襲」に抵触するから認められない
・「世襲」とあるのだから天皇の子の愛子内親王が継ぐべき
などなど。

いずれも失当、全くナンセンス、法的根拠に欠けます。

あらためて時系列の整理をすると以下の流れとなります。
1946年(昭和21年)11月3日、日本国憲法公布
1947年(昭和22年)5月3日、日本国憲法施行
1947年(昭和22年)10月14日、いわゆる旧宮家(11宮家51名)が皇籍離脱

そして旧宮家は「世襲親王家」の流れをくむ位置付けであり、時の天皇の近親:血縁の近い順番ではなく、一部の比較近親者を臣籍に降下させつつより遠縁の者を皇族として宮家を存続させ続けて来たという位置付けになります。
これは皇統の維持・バックアップという意味で、本統(時の天皇)に近い順番だけでバックアップ体制を作るよりも、一部はより離れた系統でバックアップの備えを用意しておいた方がより安定的になるという深謀遠慮によるものです。

世襲親王家に見る先人の深謀遠慮、卓越

旧宮家の皇族を皇位継承者と位置付け継承順(7位~31位)も割り振った現実において日本国憲法は制定され、施行されている経緯ですから、憲法2条における「世襲」概念においては旧宮家の存在、即位可能性が勘案されたものとなります。
よって、天皇の世襲においては大傍系からの即位でもよい、一部の近親を飛ばした形での即位でもよい、そうした継承も含めて「世襲」の継承であると位置付けらている、規定されているということになります。

いわゆる「五世孫」以遠でも差し支えない、本統(時の天皇の血筋)から600年以上離れても差し支えなく「世襲」の継承として即位可能との意味合いを持つ憲法条文であり、血筋順を飛ばしてでも男系女子による継承ではなく神武一系の男子(皇統に属する男系男子)による継承を位置付けるという形で「優先捉え」「忌避感覚」が示された規定となっています。

つまりは、憲法2条における「世襲」とは神武一系の子孫による継承ということになります。
(選挙・選抜制や婚姻等による神武系子孫以外の者による継承が排除されているという形です。)
そして神武一系の子孫の中での具体的な世襲のあり方、順位等に関しては「皇室典範」において定められるという位置付けとなります。

こうした憲法解釈、従来の一系継承の捉えの踏襲に関しては過去の国会答弁でも示されているところです。

養子に関しては、近親の順を超えた世襲親王家・大傍系の即位も有り得る形で「世襲」が規定されているのですから、神武系子孫であるならば養子であっても「世襲」の要件に抵触することはありません。
逆に、神武系子孫以外の者に関しては、養子縁組をしたとしても「世襲」には該当しません。

いずれ、憲法における「世襲」規定とは別の形で、皇室典範において明示的に養子(神武一系の子孫であっても)は禁止されていますので、憲法論ではなく皇室典範論、伝統論として養子禁止の意味に関して確認することが重要と考えます。
皇位の私物化、宮家の私物化、家系伸ばしの私物化となるので排除、禁止されている形です。
皇位の由来根拠は、時の天皇・宮家ではなく、初代神武:建国の和にあるという意味合いから、養子による神武以外の権威付けなどを禁止している形となります。

「世襲」だから天皇の娘というのは、まったく法の構造・順序順番を理解しない浅薄であり、皇室典範の規定を議論出来ない者、皇室典範規定を脇に置いて憲法を理由に誤魔化しをしたい者の詐欺的論法と見なさざるを得ません。
国会議員や公務員がこれを言う場合は、憲法99条:憲法尊重擁護義務に反する違憲行為となります。

憲法2条の条文を分かりやすく趣旨の補足すると以下の形になります。
皇位は、(神武一系の子孫による)世襲のものであつて(神武一系の子孫以外の継承は認められない)(神武一系の子孫の中での継承のあり様、順位等に関しては)国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

天皇の娘が有利になる規定、文言では全くありません。

あらためて、憲法1条、4条、5条、99条等を含めた憲法論、憲法における天皇の位置付けを吟味し直すことが重要と考えます。

皇位継承は憲法2条に基づき法律事項であって、皇室典範の変更により変えることが出来るという考えもありますが、継承の根幹に関しては憲法1条の規定、「象徴」「国民の総意に基く」、及び2条の「世襲」という規定等によって枠がはめられています。
それらとかけ離れて皇室典範を自由に変えられるものではありません。

憲法1条の意味、重み

【内閣法制局長官 林修三君(昭和34年2月6日 衆・内閣委員会)】
現在の憲法は、もちろん皇位継承のことにつきましては、法律に規定を譲っております。法律である程度のことは書き得る範囲のことがあるはずでございます。しかしこれは憲法第1条が、天皇は日本国の象徴とし、それからその地位が日本国民の総意に基くというこの規定、それから第2条に皇位は世襲のものである。こういう規定と離れて、ただいまの問題を議論することはできないと私は思うわけであります。

憲法は歴史、伝統、和を踏まえた形でつくられているもので、私たち国民の実生活にも大きな影響のあるものとなります。
国、人心が乱れるのも健全に営まれていくのも、憲法を損ねずに理念を実直に具現化していく努力にかかっているものと考えます。
そして今はそれが十分ではない状況と捉えます。
取り返しのつかない状況に至る前に建て直しが必要です。

憲法1条、2条に関しては、図表も含めたスライド動画説明を Youtube に登録しました。
ぜひご覧いただきたく。

小中学生のための天皇・皇位継承論 1 後半
・継体天皇 手白香皇女
・推古天皇 蘇我馬子
・光格天皇 後桜町天皇
・明治の皇室典範 高度な昇華
・憲法1条 象徴 国民の総意に基く
・憲法2条 世襲 皇室典範
・旧宮家子孫から皇籍に組み入れ・宮家設立

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